【特集】災害時の備え〜防災について考える〜
災害時の備え〜防災について考える〜 災害時の備え〜防災について考える〜
山村武彦氏

防災アドバイザー/防災システム研究所所長

山村武彦氏

新潟地震(1964年)でのボランティア活動を契機に防災アドバイザーを 志す。以来半世紀にわたり世界中の災害現地調査は200箇所以上。その知見を活かし、防災意識啓発に活躍中。主な著書は『近助の精神』『災害・防災用語辞 典』『目からウロコの防災新常識』『人は皆、自分だけは死なないと思っている』など多数。

「災害時の屋外での避難生活」について 今回は「災害時の屋外での避難生活」について、
お聞きしました

2016年4月に発生した熊本大地震では、避難所の中だけでなく、テントや車などを利用して、屋外に避難されている方が多いように見受けられました。
避難場所としての車について、2016年4月に起きた熊本地震の実例を交えてお話をうかがいました。

ココチモ:車も避難場所になるということを、熊本地震で初めて知った方も多いと思うのですが、そもそもなぜ熊本では、避難所に入らず、外で生活している方が多かったのですか?

山村:熊本地震では、発生から1週間で震度7が2回、震度6弱以上が7回と大地震が続き、建物に大きな被害が出ました。
震度6強〜7程度でも倒れて潰れないことを目安としたのが1981年の耐震基準ですが、それをさらに厳しくした2000年の基準に沿って建てられた家もたくさん壊れたのです。
また、最初の震度7の地震のあと、気象庁が「これからは余震に注意」と発表しました。
これを聞いて「もう大きな地震は来ないだろう」と自宅に戻ったところ、2度目の震度7の地震で家が潰れ、その下敷きになって亡くなった方もたくさんおられます。
しかも、地震が起きた時間が夜中やまだ暗い早朝が多かったので、多くの人たちが自宅はもちろん避難所でも、建物の中で夜を過ごすことを不安がるようになり、外のテントや駐車場に停めた車の中などで生活するようになったのです。

車も避難場所のイメージ ココチモ:車も避難場所になるということを、熊本地震で初めて知った方も多いと思うのですが、そもそもなぜ熊本では、避難所に入らず、外で生活している方が多かったのですか?

ペットのイメージ 山村:熊本では、避難所に入らなかったのは、家が潰れる不安を持った方ばかりではありませんでした。
夜泣きをする赤ちゃんがいるから、足が不自由な高齢者がいるから、ペットがいるから、と周りに迷惑をかけることを心配して避難所に入らなかった方もたくさんおられたのです。
そんなことを思うと、これからは私たちも駐車場やテントが張れる公園といった外への避難も考えに入れなくてはならないと思います。

ココチモ:車を避難場所として考えるとき、気をつけることはありますか? また、お勧めの車種はありますか?

電気自動車のイメージ 山村:車で避難生活をするときに、まず気をつけないといけないのは、最悪の場合は死んでしまう可能性もあるエコノミークラス症候群や熱中症です。
車内が狭ければ体調が悪くなる危険性も大きくなりますから、ほかの車種より車内が狭いセダンタイプはあまりお勧めではありません。
キャンピングカーがあればそれに越したことはないのですが、工夫すればワゴンやバンなどの車で十分生活できます。たとえば熊本では、ワゴン車の後部にレジャー用のテントのような覆いを取り付けたり、中にマットレスを敷いたりして過ごしている方をよく見かけました。
 避難する場所としてだけではなく、電気の供給源としても利用できるハイブリッド車や電気自動車もお勧めできます。

ココチモ:車を避難場所と考えるなら、備蓄は家だけでなく車の中にも用意したほうがいいと思いますが、特に車に準備しておくとよいものはありますか?

ペットのイメージ 山村:水や食料などの基本的なもののほかに、生活する場所を広げられるテントなどのアウトドア用品を備えておくとよいと思います。
ハイブリッド車や電気自動車の場合は、電気を利用するときのことを考えて、延長コードやケーブル、専用の機器なども備えておきたいものです。
けれども、まずは実際に一日、車で生活してみることをお勧めします。
そうすると、生活のどんな場面で困り、何が必要なのかがはっきりわかるからです。
たとえば熊本では、避難所の仮設トイレのそばに車を停めて生活している方がいましたが、簡易トイレを持っていれば自宅の近くで暮らすことができたでしょう。

ココチモ:熊本地震の教訓を、今後の備えに生かしていかないといけませんね。

電気自動車のイメージ 山村:その通りです。ただし、一つ注意しておきたいのは、災害はそれぞれが違った顔を持つということです。
ですから、熊本地震の教訓が別の災害にぴったり当てはまるということはなかなかないのです。
東京などの大都市部では、車での生活やテント生活の備えをしたとしても、大きな駐車場や多くの人がテントを張れる場所が少ないので、うまく活用できないかもしれません。 それに、家族構成や住んでいる町の環境によっても備えたいものは変わります。赤ちゃんや幼い子どもがいる、持病のある者がいるといった家族の状況を踏まえ、自治体のハザードマップなどを確認したうえで、それぞれが自分に合った災害への備えを考えていただきたいと思います。

ココチモ:山村先生、ありがとうございました。

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